Webサイト運営に携わる方であれば、「コンテンツマーケティング」というキーワードを耳にしたことがあるのではないでしょうか。近年話題となっている印象がありますが、Webに限らずいえばそんなに新しいものではなく、100年以上前にアメリカの農機具メーカーDeere & Companyが広めたともいわれるマーケティング手法です。 従来のWeb広告とは異なるアプローチで自社サービス・商品の利用を促すこの手法は、SEOの潮流とあいまって今や多くの企業が取り組んでいます。しかし、言葉だけは知っているけれど、実際にどんなものかを理解していないという方もいるでしょう。そこで今回は、初心者の方向けにコンテンツマーケティングの基本的な解説から事例まで紹介していきます。

コンテンツマーケティングを理解する

コンテンツマーケティングとは、わかりやすく言い換えると「自社のターゲットとなるユーザーにとって役立つ情報を提供し、関係を良好に保つこと。そして最終的なゴールとして自社サービス・商品を利用してもらうこと」になります。SEO的な面でWebサイトへの流入を増やすための手法と捉えられるかもしれませんが、本来はユーザーとの関係性を改善してゴールへ導くための手法です。

コンテンツマーケティングの事例としてよく挙げられるのが、アメリカの家庭用プール会社River Pools and Spasの取り組みです。同社はアメリカのバージニアにある会社で、グラスファイバー製のプールを主に取り扱っていました。プールは生活必需品とは違い誰もが使うものではありません。また頻繁に購入するものでもありません。リーマン・ショックが起き不況になると、厳しい状況に陥ります。同業者も倒産するところが相次ぎました。

そんななかで同社が売上を確保できたのは、コンテンツマーケティングに取り組んだからと言われています。ブログで、顧客の疑問に答えるようなプールに関する情報を掲載することに取り組みました。そしてその結果、ユーザーからも検索エンジンからも評価されたのです。

自宅にプールを設置したいと考えている潜在顧客は、ブログを訪問して知りたいことに関する具体的な情報を得られれば、同社に対して信頼感や好感を持つようになるでしょう。そして、「プールを設置したい」というニーズが顕在化したときに、ユーザーがプールに詳しい会社として想起するのは同社になるというわけです。「プールを作るのであればこの会社に頼もう」ということになります。このように、長期的に関係性を構築し、結果的に利用してもらう戦略がコンテンツマーケティングです。

▼River Pools & Spas Blog

https://www.riverpoolsandspas.com/blog

コンテンツマーケティングがWebマーケッターに注目されている理由

昔からある手法でありながら、コンテンツマーケティングは近年Webマーケッターに注目されています。その理由として、直接的な広告では、「将来的にニーズを持ちうるユーザー」に響かせづらくなっていることが考えられます。

従来は、Web上で自社サービスや商品を購入・利用してもらうためには、自社がターゲットとするユーザーに向けて広告を表示するのが一般的でした。リスティング広告であれば、関連したキーワードを検索したユーザーに対して広告を表示します。またターゲティング広告であれば、ターゲットとする属性を持つユーザーに広告を表示しますし、一度訪問して閲覧した商品を後から広告として表示するリターゲティング広告も行われています。

広告の種類は様々ですが、企業からの情報を一方的にユーザーに見せるという点では同じです。これはその情報(商材・サービス)を今必要としているユーザーに対しては効果的ですが、そうではないユーザーにとっては余計な情報となる可能性があります。これらのユーザーも将来的にニーズを持つ可能性はあるのですが、今必要としていない以上、広告を見せるだけで彼らに響かせるのは容易ではないでしょう。

一方コンテンツマーケティングは、ゆるくユーザーと関係性を構築して好意を醸成する手法です。「うちの商品は〇×が素晴らしいので買ってください」と直接的なPRをするというより、「どうせ買うならいつも役立つコンテンツを提供してくれて、私の好きな〇〇企業から買おうかな」と思ってもらうことが特徴です。広告のような短期的な効果はあまり見込めないものの、長期的にユーザーと繋がることができ、持続的な効果が見込めることが注目されている理由でしょう。

コンテンツマーケティングを行うメリット

コンテンツマーケティングに興味を持つ方が特に気になることのひとつは、「自社でコンテンツマーケティングをはじめるべきかどうか」ということでしょう。そしてその答えを出すためには、メリットを知っておくことが重要です。コンテンツマーケティングを行うメリットは、以下のようなものが挙げられます。

導入時のハードルが低い

コンテンツマーケティングの良い点は、多額の投資をしなくても始められる点です。極論、担当者がコツコツと記事を書いていくだけでもおこなうことができます。

例えば広告の場合は、外部サービスに支払う広告費がかかるうえ、基本的には「費用をかけて広告を掲載している期間しかユーザーに訴求できない」ことが特徴です。そのため、訴求し続けるためには継続して費用を捻出し、広告を掲載しつづける必要があります。その点コンテンツマーケティングは、広告のような外部サービスへの費用支払いが必須ではないので、費用負担を少なく抑えられるうえに、技術的な知識もそれほど必要ではないため、金銭的なハードルが低い方法といえます。

ただし、大規模なメディアを制作しようと思えばそれなりに費用がかかることは注意すべきです。特に社内にノウハウがないのであれば、外注することも念頭に置いておいた方がよいでしょう。

コンテンツが資産として残る

コンテンツマーケティングでは、基本的にオウンドメディアとして運営するWebサイト内にコンテンツを蓄積していきます。要するに、広告のようにサービスの契約が終わったら消えてしまうものではないので、自社にとっての貴重な資産になります。サーバを閉じたり、その他サイトがなくなる問題が起こったりしなければ半永久的に残りますので、資産となったコンテンツで継続的に集客することも可能です。

コンテンツマーケティングを行うデメリット

コンテンツマーケティングにはデメリットもあります。正しい判断を行うためにはメリットとデメリットの両面を把握することが重要です。コンテンツマーケティングのデメリットとしては、例えば以下のようなことが挙げられます。

継続的に発信が必要

コンテンツマーケティングは長期的な施策であり、継続的に情報発信をしていくことがポイントです。ただ記事を書くだけというと簡単なようですが、続けていくことは意外と難しいものです。継続してコンテンツを制作する体制を整えずに見切り発車してしまうと、後からコンテンツ制作面で特定の担当者に負担が集中したり、質の低いコンテンツが量産されてしまったりするような問題が起こる可能性があります。

成果がすぐに出ない

コンテンツマーケティングを始めてから効果が出るまでには時間がかかります。制作体制にもよりますが、コンテンツを揃えるのにもある程度時間がかかりますし、実際に流入が増えるようになるには、そこからさらに時間がかかることが想定されます。また、成果が出ても、適切な効果測定方法を持ち合わせなければ、費用対効果が見づらいという特徴もあるので、取り組みについて社内の理解が得られにくい可能性があります。 取り組みを進める場合には、長期的な施策であることを関係者に理解してもらい、効果測定方法も考えた上で取り組むようにするなど、必要な準備をしておくのが大切といえます。

コンテンツ制作の手法を理解する

いざ自社でコンテンツマーケティングを始める場合、どのようなコンテンツを制作していけばいいか、決定する必要があります。コンテンツ制作は大きく4つの型に分けることができます。自社の立ち位置や扱う商材などによって適したコンテンツは変わるものです。コンテンツ制作の型について、それぞれの特徴を理解しておくと、自社に合ったコンテンツのタイプを選ぶときの参考になります。

感情訴求型

話題になるようなコンテンツを制作することでユーザーの関心を引く手法です。例えば兵庫県の南あわじ市は、バーチャルリアリティをもじった「バーチャン・リアリティ」というプロモーション動画を制作し、話題になりました。これは簡易型バーチャルリアリティのゴーグル「ハコスコ」を使ったもので、あたかも田舎のおばあちゃんと一緒にご飯を食べているような体験ができるという仕立てのコンテンツで、新聞サイトやWebニュースメディアでも取り上げられました。

そのほか、バイラル動画やバズりやすいおもしろ動画も、感情訴求型にあたります。このようなコンテンツはSNSでシェアもされやすいといったメリットがある反面、興味本位で結果的に自社の顧客になりにくいユーザーが数多く訪問したり、企業が届けたいメッセージを正しく伝えられなったりする可能性もあります。

ロジック訴求型

ある分野で著名な人のコメントや、実際に購入した人のコメントなどをコンテンツとして訴求する手法です。例えば、美容に気を遣うことで有名な女性タレントによる「この商品をつかってよかった」というコメントがついたコスメであれば、多くの人が興味を持ち、購入したい気持ちになるでしょう。これはそのタレントが美容に力を入れていることで有名だという理解をされているためです。このように多くの人が知っている著名人が推薦することで、そのサービスや商品に価値を与えることができます。

Webサービスでは、コミュニティーフォーラムによる情報発信もよく目にします。利用者の疑問に対して同じような立場のユーザーが回答やコメントを投稿するものです。具体的なユーザーの困りごととその解決策は、後から見る人にとっても有用なコンテンツになります。

類似のコンテンツとしては、購入者の商品レビューもあります。著名人ではないものの、実際に商品やサービスを体験した人が発信する忌憚ない意見になりますので、見ている人に信頼感を与えることができます。

このようなクチコミは、ユーザーから発信されたものだと意図しない評価をされるリスクがある一方で、自社でコンテンツを制作しなくても自然に価値あるコンテンツを集めることができるという点で、企業にとってメリットが大きいといえます。上手にクチコミを投稿してもらうためには、投稿に対してインセンティブを与えたり、企業側からのコメントをしたりすることが有効でしょう。ただし、やりすぎるとステマ(ステルスマーケティング、やらせコンテンツ)のように誤解されてしまいますので、注意が必要です。

知識訴求型

ユーザーが持つ興味や疑問に対して、答えとなるような有用な情報を提供する手法です。通常の記事のほか、関連した情報を取りまとめたホワイトペーパーをダウンロードさせる方法も増えてきました。ダウンロードするために会員登録をさせれば、ユーザーの情報を獲得するためのきっかけづくりにもなります。 また、電話やメールなどお客様から届く問合せを社内で共有しておき、コンテンツにする方法もあります。お客様からの問合せは、いわば「生のユーザーの声」です。実際に届いた疑問は、他のユーザーも同じような疑問を持つ可能性が高いと考えることができます。

また最近では、情報をビジュアルでわかりやすく表示するインフォグラフィックスという手法で情報を整理したコンテンツもあります。インフォグラフィックスは情報過多の時代にわかりやすく情報を示す手法として注目です。仮にインフォグラフィックスまでいかないまでも、数字をグラフで見せることで情報をわかりやすくすることなども有効といえるでしょう。

納得型

実際にユーザーが納得感を持てるようなコンテンツを提供することで、潜在顧客に訴える手法です。例えばクラウドサービスであれば、実際にお試しできるデモ体験が挙げられます。また実際に導入した効果などがわかる導入事例やWeb上で開催するセミナー(ウェビナー)もあります。

以上のように、コンテンツにはタイプがあり、自社に合ったコンテンツを制作していくことになります。ここで気を付けたい点は、あくまでも「潜在顧客が求める情報を発信する」コンテンツであることを意識することです。例えばSEO的な価値にばかり目が行くと、価値の低いコンテンツを量産する誤ったコンテンツマーケティングを実施し、ユーザーの信頼を損ねたり、Google側からペナルティを受けたりする可能性もあります。

コンテンツマーケティングの事例

前項でアメリカのコンテンツマーケティング事例を紹介しましたが、国内でもコンテンツマーケティングの事例がいくつもあります。今回は以下の3サイトの事例を紹介します。

弁護士ドットコムニュース

https://www.bengo4.com/topics/

日本最大級の弁護士/法律ポータルサイトである弁護士ドットコムでは、「弁護士ドットコムニュース」を運営しています。これは日常的なニュースを法律的な切り口で解説したもので、専門家である弁護士が解説しているのが特徴です。

弁護士に相談するという行為は、そこまで日常的には起こらないでしょう。そのため、ただ弁護士を探すだけのサイトであれば訪問ユーザーは限定的になると考えられますが、弁護士ドットコムニュースでは身近なニュースコンテンツが配信されています。このようなニュースを日常的に見てもらうことにより、ユーザーに親近感をもってもらえれば、弁護士検索や相談など、さらに先のアクションをとってもらえる可能性があります。

サイボウズ式

https://cybozushiki.cybozu.co.jp/

チーム・コラボレーション支援のツールを提供するサイボウズでは、「サイボウズ式」というオウンドメディアを運営しており、チームで働くうえで役立つ情報を提供しています。このような、自社サービスと関連しつつ、ユーザーに有益な情報を発信するのは、コンテンツマーケティングにおけるポイントのひとつといえます。

ボクシルマガジン

https://boxil.jp/mag/

法人向けクラウドサービスの情報を比較・検討して資料請求までできるサービスを提供しているボクシルでは、業務効率化ツールやビジネスに役立つ情報サイト「ボクシルマガジン」を運営しています。クラウドサービスに関連するキーワードで検索をするとボクシルマガジンのコンテンツがヒットし、クリックして読み進めるとボクシル自体の紹介や、会員登録のセクションが出てきます。また、マーケティングに悩んでいる企業へ、ボクシルの活用を促すような文面も記載されています。コンテンツマーケティングは直接的な売り込み重視ではない手法といえますが、コンテンツに上手くサービスへの導線を作ることは施策のひとつとなります。

進化するコンテンツマーケティング

「コンテンツを作り、潜在顧客を顕在顧客に育てる」コンテンツマーケティング手法は、今後も続くと考えられます。ただ一方で、コンテンツを量産することで効果を出すコンテンツマーケティングの価値は下がり、新しいかたちの、いわば「進化したコンテンツマーケティング」が盛んになっていく可能性があります。そのひとつが「人がいるところにコンテンツを配置する」新しい流れです。

今までは「Content is King(コンテンツは王様)」と呼ばれ、Webサイト運営においてはコンテンツが重要だと考えられていました。コンテンツの流通においてはオウンドメディアにいかに質の高いコンテンツを蓄積していくかが工夫されていたのです。

しかしTwitterやInstagramといったSNSによるコミュニケーションが一般的になるに従い、コンテンツの流通経路に変化が生まれました。わかりやすい例が分散型メディアと呼ばれるメディアの存在でしょう。Webサイトにコンテンツをあげて人を集めるのではなく、TwitterやYouTubeなどユーザー数が多く、視聴者が多いメディアにコンテンツを配信するタイプのメディアで、レシピ動画のDelish Kitchenの初期が代表例です。

それを支援する技術として、マーケティングオートメーションツール(MAツール)の存在もあるでしょう。MAツールの進化により、ユーザーに適したコンテンツを配信することが容易になりました。

今後は、コンテンツ重視の考え方から、SNSで情報のやりとりやシェアをする時代に合った配信形式がコンテンツマーケティングにも取り入れられていく可能性があります。例えばコンテンツで潜在顧客を集めるのではなく、別の方法でユーザーが集まっているところに、そのユーザーに合わせたコンテンツを配信する方法です。コンテンツマーケティングの新しい動きにも注目しておきたいところです。

コンテンツマーケティングとは、自社に蓄積するコンテンツを使って潜在顧客を集め、商品購入や利用につなげるというマーケティング手法として、近年のWebマーケティングで大きな位置を占めています。コンテンツマーケティングを行う上で重要なのは、ユーザーに役立つコンテンツを作ることです。自社でコンテンツマーケティングをはじめたいと考える場合には、自社のターゲットとなるユーザー(潜在顧客)にとって、どんなコンテンツが役に立つのかを考える必要があります。また無理なくコンテンツを制作する体制づくりも重要です。まずは自社で実現可能な範囲から始めてみるとよいでしょう。